一般的な緩衝材とセロパッキンの違いについて
今回は、セロパッキン(セロメン:以下セロパッキンに統一)と、一般的な緩衝材との違いについて考えたいと思います。
≪緩衝材って何?≫
緩衝材とは、商品を発送する場合に、傷やへこみなどを防止するために使用する「詰め物」で使用後には廃棄されるのが一般的です。
主にご使用される場面としては、青果物や工業製品などの輸送時に、走行中の揺れなどの衝撃から製品のダメージを軽減することを目的にご使用されることが多いです。
≪緩衝材の種類≫
緩衝材の種類は、大きく分けて①石化素材(石油由来)と、②天然素材(パルプ由来)の2つになります。
≪石化素材:石油由来≫
石化素材では、皆さんがよく目にするエアー緩衝材(プチプチ®:川上産業㈱)が代表的な物になりますが、他にはフルーツキャップやウレタンなどがあります。
特徴としては、加工適性に優れており安価な緩衝材が大量に作れることです。他には、帯電防止効果や防錆効果など、複合的な要素を加えて作ることも可能です。
用途としては、工業製品の緩衝材として、安価で大量に必要とされる状況でご使用になることが多いです。
≪天然素材:パルプ由来≫
天然素材では、紙パッキン、木毛パッキン、ハニーペーパー、そして今回ご紹介します「セロパッキン」があります。
特徴としては、石化素材に比べ加工適性は劣りますが、様々な色目や風味を演出することが加工となり、高価な青果物か製品でお使い頂くことが多いです。
用途としては、製菓や化粧品、果物などの緩衝材及び、色目の緩衝材を使うことでデザイン包装としてご使用になることもあります。特に木毛パッキンについては、天然の木の香りがしますので、アロマ商品として販売しているお客様もおられます。
これらの素材にはそれぞれの特徴があり、用途に応じた素材を選ぶことで、商品価値の向上に繋がっています。
≪セロパッキンの役割≫
セロパッキンを緩衝材として使うことがもっとも多いのは、果物の緩衝用です。
その理由としては、セロファンフィルムが呼吸しているからです。
この呼吸とは、セロファンの透湿性のことを指しています。この透湿性により、果物の蒸れを防止するだけでなく、一定の水分量も保持することができるため、乾燥を防止する効果があります。
この果物へのキズ防止以外の効果である「蒸れずに腐らない」は、エアー緩衝材などでは効果を発揮することが難しいです。
また、写真のようにフルーツキャップや不織布と合わせてお使い頂くことで、より効果的に緩衝材としての効果が期待できます。
≪セロパッキンは、こんな時に使うと効果的≫
セロパッキンは、前述の通り果物の緩衝材として使うと「蒸れずに腐らない」だけでなく、他の緩衝材ではしっかり詰めないといけないのに対し、セロパッキンは包み込むように使いますので、果物自身や緩衝材との擦れによる黒ズミの発生を抑えることも期待できます。
また、緑・ピンク・黄色に染めることもできるため、盛り篭を作る時などにお使い頂くとよりデザイン効果が良くなります。
以上のことから、セロパッキンをお使い頂くのに最適な果物は、リンゴなどの硬い果物よりも、桃など取り扱いに非常に注意がいる物でお使い頂くとより効果的です。
≪セロパッキンのメリットとデメリット≫
セロパッキンをご使用する際にも、メリット、デメリットがあります。これらを理解した上で使用すると、適切に使うことができます。
≪セロパッキンを使うメリット≫
- 環境にやさしい天然素材
- 環境にやさしいだけでなく、果物にとって一番やさしい緩衝材である
- スリット加工などで出る残原紙で製造しているので、廃棄物削減に繋がっている
- 燃えるゴミとして処分でき、余分な廃棄コストが掛からない
≪1.環境にやさしい天然素材≫
なぜセロパッキンが、環境にやさしい天然素材なのかは、生分解性のパルフから作られているからです。
≪2.環境にやさしいだけでなく、果物にとって一番やさしい緩衝材≫
セロパッキンは非常に紙に近い素材で、透明かつ吸湿する性質により、乾燥しすぎずに蒸れ難い効果を持っています。
また、フワフワとした緩衝力がありつつもフィルムの適度な硬さが、果物を傷や擦れなどから防止できる点が、他の緩衝材とは違い果物にとっての理想的な緩衝材となっています。
≪3.スリット加工などで出る残原紙で製造しているので、廃棄物削減に繋がっている≫
セロファン原紙を指定サイズに再加工する場合、スリット耳が発生します。そのスリット耳は通常廃棄されますが、当社ではそのスリット耳を使ってセロパッキンを製造していますので、廃棄物削減に繋がっていると考えています。
≪4.燃えるゴミとして処分でき、余分な廃棄コストが掛からない≫
セロパッキンは、セロファン100%の原料で作られています。そのセロファンは、パルプで作られていますが、セロファンへのリサイクルが出来ませんので、一般可燃物として処分されます。
その為、産業廃棄物への処理の仕方や、一般家庭ゴミの分別手間が不要となりますので、ご使用後の廃棄に対する心配がいりません。
≪セロパッキンを使うデメリット≫
- 業者を通じてしか買えない
- 石油由来のフィルムと勘違いされることが多い
- 目分量で、取り分けて使わないといけない
(ご指定量での対応も可能ですが、別注になります)
≪1.業者を通じてしか買えない≫
セロパッキンは、一般流通品では無い為、ホームセンターや雑貨店での販売を見かけることはほとんどありません。
その為、お近くの包装資材店が主な販売ルートになります。一部インターネットでの販売もされていますが、全流通量の95%以上は包装資材専門店から販売されています。
余談ですが、この記事をお読み頂いている方の中でも、初めてセロパッキンをご購入されて届いた大きさに驚かれた方も多いのではないでしょうか?
≪2.石油由来のフィルムと勘違いされることが多い≫
セロパッキンは、石油由来のフィルムとよく勘違いをされていますが、先ほど述べました通りセロパッキンは天然素材で作られています。
では何故、石油由来のフィルムと勘違いをされるかですが、
①パルプが、透明になるという発想が思いつかない
②セロファンが、安価な石油由来のフィルムに置き換わり、汎用品で無い
≪3.目分量で、取り分けて使わないといけない≫
セロパッキンは、袋から取り出して少しほぐしながらお使い頂いていると思います。その時、必要な量はどのようにして決めておられるでしょうか?
ある程度のご使用回数を重ねて慣れた方には問題ありませんが、そうで無い場合は少し困るとのお声をお聞きすることがあります。
この問題は、セロファンの水分吸湿量の違いによるものですので、温度や湿度の極端な変化がある場所でなく、ある程度一定の温度・湿度の場所に保管して頂ければと思います。
≪まとめ≫
今回は、一般的な緩衝材とセロパッキンの違いについてご紹介させて頂きました。
改めてセロパッキンと一般的な緩衝材との違いについて整理致します。
セロパッキンは天然素材の緩衝材で、他には紙パッキン、木毛パッキン、ハニーペーパーなどがあります。
このセロパッキンは、天然素材で環境にやさしいだけでなく、原料から製造、そして廃棄に至るまで、非常に環境負荷が少ない製品であり持続可能な製品の1つと考えられています。
また、セロパッキンを緩衝材として使用する場合、果物の緩衝材としては非常に効果的な緩衝材です。
それは、セロパッキンが天然素材であるパルプから出来ており、非常に紙に近い素材だということです。この紙に近い素材の性質が、乾燥し過ぎず蒸れない絶妙なバランスと、フワフワとした緩衝力があり適度な硬さを持っていることで、果物を傷や擦れなどから防止できる点が、他の緩衝材とは違い果物の理想的な緩衝材となっています。
天然素材と言えば、紙パッキンや木毛パッキンもあり、果物への易しさなどは同じ様に期待できます。
しかしながら、紙パッキンは高価であり、木毛パッキンは硬すぎるため、リンゴなどでは使われていますが、桃などの柔らかい果物には不向きとなっています。
以上の点から、改めてセロパッキンについて見直してみると、如何に使いやすく環境にも果物にもいい製品だと思いました。
ぜひ、この記事をお読み頂いた果物包装に係わる皆様に、近年のSDGsという観点からもセロパッキンの良さを改めて感じて頂ければと思い書かせて頂きました。
最後まで、お読み頂きましてありがとうございました。